Classiques japonais avec furigana
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「しなゆうき」
支那游記
Lisez 支那游記 (「しなゆうき」) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 859 caractères · 105 écrans
雑然とあたりを塞いだ中に、水煙管を啣えた支那服の主人が、気楽そうに客を待ち受けている。次手にちょいとひやかして見たが、五割方は懸値であるとしても、値段は格別安そうじゃない。これは日本へ帰った後、香取秀真氏にひやかされた事だが、骨董を買うには支那へ行くより、東京日本橋仲通りを徘徊した方が好さそうである。
骨董屋の間を通り抜けたら、大きな廟のある所へ出た。これが画端書でも御馴染の、名高い城内の城隍廟である。廟の中には参詣人が、入れ交り立ち交り叩頭に来る。勿論線香を献じたり、紙銭を焚いたりするものも、想像以上に大勢ある。その煙に燻ぶるせいか、梁間の額や柱上の聯は悉妙に油ぎっている。事によると煤けていないものは、天井から幾つも吊り下げた、金銀二色の紙銭だの、螺旋状の線香だのばかりかも知れない。これだけでも既に私には、さっきの乞食と同じように、昔読んだ支那の小説を想起させるのに十分である。まして左右に居流れた、判官らしい像になると、――或は正面に端坐した城隍らしい像になると、殆聊斎志異だとか、新斉諧だとかと云う書物の挿画を見るのと変りはない。私は大いに敬服しながら、四十起氏の迷惑などはそっち除けに、何時までも其処を離れなかった。