Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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「しなゆうき」

支那游記

芥川 竜之介

Lisez 支那游記 (「しなゆうき」) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 859 caractères · 105 écrans

Aozora Bunko

さて席が定まると、熱湯を通したタオルが来る、活版刷りの番附が来る。茶は勿論大土瓶が来る。その外西瓜の種だとか、一文菓子だとか云う物は、不要不要をきめてしまえば好い。タオルも一度隣にいた、風貌堂々たる支那人が、さんざん顔を拭いた挙句鼻をかんだのを目撃して以来、当分不要をきめた事がある。勘定は出方の祝儀とも、一等では大抵二円から一円五十銭の間かと思う。かと思うと云う理由は、何時でも私に払わせずに、村田君が払ってしまったからである。

支那の芝居の特色は、まず鳴物の騒々しさが想像以上な所にある。殊に武劇――立ち廻りの多い芝居になると、何しろ何人かの大の男が、真剣勝負でもしているように舞台の一角を睨んだなり、必死に銅鑼を叩き立てるのだから、到底天声人語所じゃない。実際私も慣れない内は、両手に耳を押えない限り、とても坐ってはいられなかった。が、わが村田烏江君などになると、この鳴物が穏かな時は物足りない気持がするそうである。のみならず芝居の外にいても、この鳴物の音さえ聞けば、何の芝居をやっているか、大抵見当がつくそうである。「あの騒々しい所がよかもんなあ。」――私は君がそう云う度に、一体君は正気かどうか、それさえ怪しいような心もちがした。