Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

「しなゆうき」

支那游記

芥川 竜之介

Lisez 支那游記 (「しなゆうき」) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 51 859 caractères · 105 écrans

Aozora Bunko

電燈の明い波止場には、もう殆人影も見えない。その向うの往来には、三階か四階の煉瓦建が、ずっと夜空に聳えている。と思うと苦力が一人、鮮かな影を落しながら、目の下の波止場を歩いて行った。あの苦力と一しょに行けば、何時か護照を貰いに行った日本領事館の門の前へ、自然と出てしまうのに相違ない。

私は静かな甲板を、船尾の方へ歩いて行った。此処から川下を眺めると、バンドに沿うた往来に、点々と灯が燦いている。蘇州河の口に渡された、昼は車馬の絶えた事のないガアドン・ブリッジは見えないかしら。その橋の袂の公園は、若葉の色こそ見えないが、あすこに群った木立ちらしい。この間あすこに行った時には、白々と噴水が上った芝生に、S・M・Cの赤半被を着た、背むしのような支那人が一人、巻煙草の殻を拾っていた。あの公園の花壇には、今でも鬱金香や黄水仙が、電燈の光に咲いているであろうか? 向うへあすこを通り抜けると、庭の広い英吉利領事館や、正金銀行が見える筈である。その横を川伝いにまっ直行けば、左へ曲る横町に、ライシアム・シアタアも見えるであろう。あの入り口の石段の上には、コミック・オペラの画看板はあっても、もう人出入は途絶えたかも知れない。