Classiques japonais avec furigana
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どうじ
文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子
室生 犀星
Lisez 文豪怪談傑作選 室生犀星集 童子 (どうじ) de 室生 犀星 (むろうさいせい) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 177 454 caractères · 357 écrans
よく覚えているのね。」
母親は、また言葉を継ぎ足した。「あのときから見ると、おまえは大そう歳をおとりだけれど、あの時分はまだお前は歩くこともできなかった。」
「そう、僕は歩けはしなかったのね、けれど今は歩けるのね。ほんとうに何んだかふしぎね。」
童子は、柱の下に立った。そうして刻限をきざむ音にちいさい耳を欹てた。白い肌をもつ時計には卵黄色に曇った電燈のあかりが、光をやや弱めながら近づいていた。
「そうさ、あのころから見ると、この時計も古いものだ。わずかしばらくだったが、おれには百年も経ったような気がするんだ。」
父親は、時計を見上げながら悲しそうにした。
「でもこの子はこうしているんだから……。」
母親は、童子のあたまを撫でさすった。「ほんとにお前を何処へ返すものか。」そう言い手をとろうとしたとき、いまのいままでいた童子は、既う玄関のそとに立ち出て、黙ってすたすた歩いて行こうとした。
「もうお帰り? ひどいわ、そりゃ。」
母親は、玄関へ飛び出した。そうして父親も。――しかし童子の姿は、植込みのかげにすら影を停めなかった。
「あの子はもう帰って了った――。」