Classiques japonais avec furigana
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うきふね
文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集
泉 鏡花
Lisez 文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集 (うきふね) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 938 caractères · 67 écrans
五
五
やがて一町出はずれて、小松原に、紫陽花の海の見える処であった。
「君、君。」
何と思ったか、巽がその六でなしを呼んだのである。
「ええ、手前で、へい。」と云うと、ぎっくり腰を折って、膝の処へ一文字に、つん、と伏せた笠の上、額を着けそうにして一ツおじぎをした工合が、丁寧と言えば丁寧だが、何とも人を食った形に見える。
辰吉は片頬笑して、
「突然で失礼ですがね、何処此処と云ってるよりか、私の許へ泊っちゃ何うです。」
「へい、貴方へ。」と、俯向けていた地薄な角刈の頭を擡げて、はぐらかす気か、汗ばんだか、手の甲で目を擦って、ぎろりと巽の顔を見た。
「何うです、泊りませんか……ッたってね、私も実は、余所の別荘に食客と云うわけだが、大腹な主人でね、戸締りもしない内なんだから、一晩、君一人ぐらい、私が引受けて何うにもしますよ。」
「へええ、御串戯を。」と道の前後をして、苦笑いをしつつ、一寸頭を掻いたは、扨は、我が挙動を、と思ったろう。
「串戯なもんですか。」
其処が水菓子屋の店前で――巽は、別に他に見当らなかったので、――居合す小僧に振向いて、最う一軒薬屋はないか、と聞いて、心得て出て、更めて言った。