Classiques japonais avec furigana
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うきふね
文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集
泉 鏡花
Lisez 文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集 (うきふね) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 938 caractères · 67 écrans
その中に、廂に唐辛子、軒に橙の皮を干した、……百姓家の片商売。白髪の婆が目を光らして、見るなよ、見るなよ、と言いそうな古納戸めいた裡に、字も絵も解らぬ大衝立を置いた。
宝丹は其処にあったが、不思議に故郷に遠い、旅にある心地がして、巽はふと薄い疲労さえ覚えた。道もやがて別荘の門から十町ばかり離れたろう。
右から左に弁ずる筈を、こうして手に入れた宝丹は、心嬉しく、珍らしい。
「あの、お薬をめしあがりますなら、お湯か何ぞ差上げますわ。」
唯、片側の一軒立、平屋の白い格子の裡に、薄彩色の裙をぼかした、艶なのが、絵のように覗いて立つ。
黒髪は水が垂りそう、櫛巻の房りとした、瓜核顔の鼻筋が通って、眉の恍惚した、優しいのが、中形の浴衣に黒繻子の帯をして、片手、その格子に掛けた、二の腕透いて雪を欺く、下緊の浅葱に挟んで、――玉の荵の茶室を起った。――緋の袱紗、と見えたのは鹿子絞の撥袋。
片手に象牙の撥を持ったままで、巽に声を掛けたのである。
薬の錫を持ったなり、浴衣の胸に掌を当てて、その姿を見たが、通りがかりの旅人に、一夜を貸そうと云った矢先、巽は怪む気もしないで、