Classiques japonais avec furigana
ja-reading.com
Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.
うきふね
文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集
泉 鏡花
Lisez 文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集 (うきふね) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 938 caractères · 67 écrans
癖に成って、一雫の風を誘う潮の香もないのであった。
男は草鞋穿、脚絆の両脚、しゃんとして、恰も一本の杭の如く、松を仰いで、立停って、……眦を返して波を視た。
「ああ、唄じゃねえが、一雨欲しいぜ……」
俄然として額を叩いて、
「慌てまい。六ちゃん、いや、ちゃんと云う柄じゃねえ。六公、六でなし、六印、月六斎でいやあがら。はははは。」
肩を刻んで苦笑いして、またふらふらと砂を踏み、
「野宿に雨は禁物でえ。」
その時躓く。……
「これわいな! 慌てまいとはこの事だ。はあ、松の根ッ子か。この、何でもせい。」
岸辺の茶屋の、それならぬ、渚の松の舫船。――六蔵は投遣りに振った笠を手許に引いて、屈腰に前を透かすと、つい目の前に船首が見える。
船は、櫂もなく艪もなしに、浜松の幹に繋いで、一棟、三階立は淡路屋と云う宏壮な大旅館、一軒は当国松坂の富豪、池川の別荘、清洒なる二階造、二見の浦の海に面した裏木戸の両の間、表通りへ抜路の浜口に、波打際に引上げてあった。
夫女巌へ行くものの、通りがかりの街道から、この模様を視めたら、それも名所の数には洩れまい。舷に鯔は飛ばないでも、舳に蒼い潮の鱗。