Classiques japonais avec furigana
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うきふね
文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集
泉 鏡花
Lisez 文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集 (うきふね) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 938 caractères · 67 écrans
」
巽は口許の片頬を圧えて言ったのである。
「虫が来て此処へ留ったんです、すっと消え際の弱い稲妻か、と思いました。目前に光ったんですから吃驚して、邪険に引払うと、最う汽車が動出す。
妙にあとが冷つくのです、濡れてるようにね、擦って見ても何ともないので。
忘れていると、時々冷い。何か、かぶれでもしやしないかしら、螢だと思ったものの、それとも出合頭に、別の他の毒虫ででもありはしないかと、一度洗面台へ行って洗いましたよ。彼処で顔を映して見ても別に何事もないのです、そのうちに紛れてしまう。それでも汽車で、うとうとと寝た時には、清水だの、川だの、大な湖だの、何でも水の夢ばかり切々に見ましてね、繋ぎに目が覚める、と丁ど天龍川の上だったり、何処かの野原で、水が流れるように虫の鳴いてた事もありましたがね。最う別に思出しもしないで、つい先刻までそれ切りで済んでいました。
今しがたです……
池川さんの、二階で、」
と顔を見合せた時、両方で思わず頷く様な瞳を通わす、ト圧えた手を膝にして巽はまた笑を含んで、
「……釣舟にしておきましょう、その舟のね、表二階の方へ餉台を繋いで、大勢で飲酒ながら遊んでいたんですが、景色は何とも言えないけれど、暑いでしょう。