Classiques japonais avec furigana
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うきふね
文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集
泉 鏡花
Lisez 文豪怪談傑作選・特別篇 鏡花百物語集 (うきふね) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 32 938 caractères · 67 écrans
……前の筋道は分らない。(――渚の二人の女は舳を切るか、そこへは白浪が、ざあざッとかかる。大方艫へ廻るであろう。砂丘つづきの草を踏んでと、学生が見ていると、立どまっていた二女が、ホホホと笑うと思うと、船の胴を舷から真二つに切って、市松の帯も消えず、浪模様の裾をそのままに彼方へ抜けた。……)――
恰もこの時であった。居る処の縁を横にして、振返れば斜に向合う、そのまま居れば、背さがりに並ぶ位置に、帯も袖も、四五人の女づれ、中には、人いきれと、温気にぐったりとしたのもある。その中から、こう俯向き加減に、ほんのりと艶の透く顔を向けて、幽かな衣の身動ぎで、真三に向直った女があった。
「あなた。」
「…………」
「槙さん。」
「あ、」
と云ったが、その姿は別の女の背と、また肩の間に、花弁を分けたようにはさまって、膝も胸もかくれている。明石の柳条の肩のあたりが淡く映った。
「今夜はよく入らっしゃいました。」
「は。」
もとより怪談最中である。声あるだけに、ものいいは低かった。が、またこの折には、あちらでも、こちらでも、ひそひそ話が泡沫に成って湧いたから、さまでに憚るでもなかったので、はっきりと聞えたのである。