Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

Lisez 新書太閤記 (しんしょたいこうき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 200 320 caractères · 398 écrans

Aozora Bunko

じっと、立ち竦み合っていたほかの兵も、その声につられて、

「おお、琴の音がする! ……」

「琴の音だ! ……」

と、さもさもなつかしいものにでも巡り会ったように、眼をほそめ、耳をすまして、聞き恍れていた。

ここばかりでなく、恐らくは、櫓の上でも、武者溜りでも、支塁のここかしこでも、一瞬悉く同じ思いに囚われたのではなかろうか。

矢かぜ、銃音、雄叫びに、明けては暮れ、暮れては明け、ここ三年のあいだというもの、まったく家なく身なく骨肉なく――ただこの一城を中心に、飢えても傷ついても、屈せず退かず、鬼のごとく立て籠って来たひたぶるな身に――ふと聞えてきた琴の音は、卒然と、この中の将士の心に、さまざまな思いを喚び起させた。

ふるさとは

こよひかぎりの命とも

知らでや人の

われを待つらむ

元弘の忠臣菊池武時が、賊将少弐大友の軍に包囲されて、最期の孤塁から家郷の妻を思い、一子武重に歌を託して、母の許へ奔らせたというその辞世を――いまの自分に思いあわせて、思わず口誦さんだ人たちもあろう。

流離した老母を思い、絶えて消息のない子や弟妹のことを思い出した兵もあろう。いや、何も後顧はないこの身ひとつとしている兵にしても、石でない木でない有情の心琴を揺すぶられて、何とはない涙が眦からひとりでに垂れてくるのをみな、どうしようもなかった。