Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

なかじきり

日本の文学 2 森鴎外(一)

森 鴎外

Lisez 日本の文学 2 森鴎外(一) (なかじきり) de Mori Ōgai (森 鴎外) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 22 092 caractères · 45 écrans

Aozora Bunko

その待っている人が誰であろうと、ほとんどかまわないくらいである。あの花籠の向うにどんな顔が現れて来ようとも、ほとんどかまわないくらいである。渡辺はなぜこんな冷澹な心持になっていられるかと、みずから疑うのである。

渡辺は葉巻の煙をゆるく吹きながら、ソファの角のところの窓をあけて、外を眺めた。窓のすぐ下には材木がたくさん立てならべてある。ここが表口になるらしい。動くとも見えない水をたたえたカナルをへだてて、向う側の人家が見える。多分待合かなにかであろう。往来はほとんど絶えていて、その家の門に子を負うた女が一人ぼんやりたたずんでいる。右のはずれの方には幅広く視野をさえぎって、海軍参考館の赤煉瓦がいかめしく立ちはだかっている。

渡辺はソファに腰をかけて、サロンの中を見廻した。壁のところどころには、偶然ここで落ち合ったというような掛け物が幾つもかけてある。梅に鶯やら、浦島が子やら、鷹やら、どれもどれも小さい丈の短い幅なので、天井の高い壁にかけられたのが、尻を端折ったように見える。食卓のこしらえてある室の入口を挾んで、聯のような物のかけてあるのを見れば、某大教正の書いた神代文字というものである。