Classiques japonais avec furigana
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めいあん
明暗
Lisez 明暗 (めいあん) de Natsume Sōseki (夏目 漱石) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 322 590 caractères · 645 écrans
彼は不思議そうに小切手を眺めた。それからゆっくり訊いた。
「こりゃいったいどうしたんだい」
この冷やかな調子と、等しく冷やかな反問とが、登場の第一歩においてすでにお延の意気込を恨めしく摧いた。彼女の予期は外れた。
「どうしもしないわ。ただ要るから拵えただけよ」
こう云った彼女は、腹の中でひやひやした。彼女は津田が真面目くさってその後を訊く事を非常に恐れた。それは夫婦の間に何らの気脈が通じていない証拠を、お秀の前に暴露するに過ぎなかった。
「訳なんか病気中に訊かなくってもいいのよ。どうせ後で解る事なんだから」
これだけ云った後でもまだ不安心でならなかったお延は、津田がまだ何とも答えない先に、すぐその次を付け加えてしまった。
「よし解らなくったって構わないじゃないの。たかがこのくらいのお金なんですもの、拵えようと思えば、どこからでも出て来るわ」
津田はようやく手に持った小切手を枕元へ投げ出した。彼は金を欲しがる男であった。しかし金を珍重する男ではなかった。使うために金の必要を他人より余計痛切に感ずる彼は、その金を軽蔑する点において、お延の言葉を心から肯定するような性質をもっていた。