Classiques japonais avec furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 158 540 caractères · 319 écrans
気の弱いものにはむしろ凄愴いようにも思われた。白髪の多い、頬骨の高いおまきは、伏目にそれをじっと眺めながら、ときどきそっと眼を拭いていた。
おまきの手から引き離された猫の運命は、もう説明するまでもなかった。万事が予定の計画通りに運ばれて、かれらは生きながら芝浦の海の底へ葬られてしまった。それから五、六日を経っても猫はもう帰って来なかった。長屋じゅうの者はほっとした。
併しおまきは別にさびしそうな顔もしていなかった。七之助は相変らず盤台をかついで毎日の商売に出ていた。その猫を沈められてから丁度七日目の夕方におまきは頓死したのであった。
それを発見したのは、北隣りの大工の女房のお初で、亭主は仕事からまだ帰って来なかったが、いつもの慣習で彼女は格子に錠をおろして近所まで用達に行った。南隣りは当時空家であった。したがって、おまきの死んだ当時の状況は誰にも判らなかったが、お初の云うところによると、かれが外から帰って来て、路地の奥へ行こうとする時に、おまきの家の入口に魚の盤台と天秤棒とが置いてあるのを見た。七之助が商売から戻って来たものと推量した彼女は、その軒下を通り過ぎながら声をかけたが、内には返事がなかった。