Classiques japonais avec furigana
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はんしちとりものちょう
時代推理小説 半七捕物帳(一)
岡本 綺堂
Lisez 時代推理小説 半七捕物帳(一) (はんしちとりものちょう) de 岡本 綺堂 (おかもときどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 158 540 caractères · 319 écrans
「おい、あの男はなんだ。おめえ知らねえか」と、半七は小声で源次に訊いた。
「あれは町内の経師職の伜で、弥三郎というんです」
「師匠の家へ出這入りすることはねえか」
「去年までは毎晩稽古に行っていたんですが、若い師匠が死んでからちっとも足踏みをしねえようです。あいつばかりじゃあねえ。若い師匠がいなくなってから、大抵の男の弟子はみんな散ってしまったようですよ。現金なもんですね」
「師匠の寺はどこだ」
「広徳寺前の妙信寺です。去年の送葬のときに私も町内の附き合いで行ってやったから、よく知っています」
「むむ、妙信寺か」
源次に別れて、半七は御成道の大通りへ一旦出て行ったが、また何か思いついて、急に引っ返して広徳寺前へ足をむけた。土用が明けてまだ間もない秋の朝日はきらきらと大溝の水に映って、大きい麦藁とんぼが半七の鼻さきを掠めて低い練塀のなかへ流れるようについと飛び込んだ。その練塀の寺が妙信寺であった。
門をくぐると左側に花屋があった。盆前で参詣が多いとみえて、花屋の小さい店先には足も踏み立てられないほどに樒の葉が青く積まれてあった。
「もし、今日は」
店口から声をかけると、樒に埋まっているようなお婆さんが屈んだ腰を伸ばして、眼をしょぼしょぼさせながら振り向いた。