Classiques japonais avec furigana
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いんじゅうトリステサ
橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇
橘 外男
Lisez 橘外男ワンダーランド 人獣妖婚譚篇 (いんじゅうトリステサ) de 橘 外男 (たちばなそとお) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 154 788 caractères · 299 écrans
なぞを掛けてよこしたというのは、ちょうどお互いの間がこういう風に、妙にこじれた状態の時であった。
「頭取! ……奥様からお電話でございますが」
と女秘書から受話器を差し出された時には、場合が場合だけにドキリとした。
てっきりこの間からの話を付けるためか、さもなければあんな我儘な性質だから、事によったら弁護士事務所へでも寄って、離婚の訴訟でも起してくるのではあるまいか? とさすがに胸の轟くのを禁じ得なかった。が、
「ああもしもし……貴方ロドリゲス? え? ロドリゲスでいらっしゃる?」
と受話器の向うから送られてくる声は、マジャルドーのことなぞ言い出して、機嫌を悪くしたのはどこの誰でしょうと言わぬばかりに、柔らかな優しい妻の調子であった。
「私ねえ……今ホテル・アルベアール・パラスへ来ていますのよ。貴方もうお食事お済みになりまして? まだ? そう……まだでしたらいかが? これからこちらへいらっして一緒にお上りになりません?」
何かは知らず風向きが変ったなと思った途端、安堵が私の胸にも込み上げてきた。電話の模様によっては、言いにくいことも今日こそマジャルドーに打ち明けて、当分家へ来ることは遠慮してもらわなければならぬと咄嗟に決心していた胸の閊えが跡形もなく消え失せて、私は電話口を抑えて吻と深い溜息を洩らした。