Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

じろうものがたり

次郎物語

下村 湖人

Lisez 次郎物語 (じろうものがたり) de 下村 湖人 (しもむらこじん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 146 773 caractères · 294 écrans

Aozora Bunko

「どうじゃ、これなら文句なかろう。」

文句があるも、ないも、二人はどの絵を見ても同じ感じがするだけであった。で、返事をしないで、くすぐったそうに眼を見あわせた。すると、運平老は言った。

「蘭が一株、千仭の断崖に根をおろして匂っているのじゃ。よいかな、たった一株じゃぞ。その一株の下は深い谷じゃ。断崖をつとうて、すっと見おろすと、白い泡をふいて水が流れている。流れにそうて森もあれば、畑もある。どこかに小さな人影も見えていよう。その上を鳶が輪に舞っているかも知れん。いい景色じゃ……。」

運平老は、そこでちょっと言葉を切った。そしてまた何度もうなずいてから、

「今度は上を見るんじゃ。断崖は何十丈と上の方にものびている。じゃが、もうそこには一本の木も草もない。丸裸の岩がただ真青な天に食い入っているだけじゃ。白い雲が一ひらぐらいは浮いているかも知れんがの。どうじゃ、これもいい景色じゃろう。」

次郎には何のことやらさっぱりわからなかった。しかし、恭一が案外真剣な眼付をして絵に見入っているので、自分も仕方なしに、画面の天地の何も描いてない部分を、きょろきょろと見上げ見おろしていた。