Classiques japonais avec furigana
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じろうものがたり
次郎物語
下村 湖人
Lisez 次郎物語 (じろうものがたり) de 下村 湖人 (しもむらこじん) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 146 773 caractères · 294 écrans
一八 転機
しかし、四誓願といっても四つがべつべつではない。心はただ一つだ。忠も、孝も、武士道も慈悲も、つまり見事に死ぬことだよ。見事に死んで、見事に生きることだよ。君らは剣道でその稽古をしているわけなんだ。」
鐘が鳴った。
朝倉先生は立ち上ってズボンの塵を払いながら、
「じゃあ、そのつもりで、しっかり稽古したまえ。大慈悲を起し人のためになるべき事、――いいかね。」
次郎は、お辞儀をすますと、いっさんに道場の方に走った。朝倉先生は、そのいきいきした姿が見えなくなるまで、彼を見おくっていたが、やがて大きく息をして、白楊の高い梢を見あげた。
真っ青な空には、一ひらの白い雲がしずかに浮いていた。
一八 転機
大巻のお祖父さんの仕込みもあって、入学の当初から次郎は剣道に熱心だったが、その日はとりわけ懸命に稽古を励んだ。彼の心構えには、何か知らいつもとちがったところがあり、打っても打たれても気分は爽やかに落ちついていた。ふだんだと、打たれていきり立つとか、勝ちほこって相手をからかってみるとか、いうようなことがないでもなかったが、その日は、ふしぎに、そんな気には少しもなれなかった。