Classiques japonais avec furigana
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
Lisez 欧洲紀行 (おうしゅうきこう) de 横光 利一 (よこみつりいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 120 107 caractères · 241 écrans
三月十日
午後四時、第三回洋上句会がある。私は胃痛のため、良い句も出来ず投げた。虚子氏の撰に入った私の句一点。
京に似しペナンは月の真下にて
私の好きな句は左の句。
雨晴れやパンの樹のある夏木立
三月十日
今日の午後二時にコロンボに着く筈。漸く胃は恢復した。魔の海も無事通過だ。紅海の暑さはこれ以上との事だが、もう良い加減にしてもらいたいと思う。ヨーロッパへ行くにも、こんな苦労も入るのだ。しかも、まだこの倍の長さを行かねばならぬ。三等の客室を覗きに行こうと思うが、向うの客に同情してしまっては今は困る。なるだけ極楽にいるつもりでいたい。ところが、四等ともいうべきデッキパッセンジャーに印度人五六十名がいる。これは金を沢山持っている連中だそうだが、デッキで自炊をやり、天幕の下で寝起きをしている。各等羨望の的はこれだ。
セイロン島が船と共に走っている。間もなくコロンボだ。見たところ、印度は九州の端みたいなもの。デッキパッセンジャーの印度人たちは、美しい衣を着替えて嬉しそうだ。彼らはここで降りて長い間憧れた故郷へ帰って行くのである。
三月十日
午後四時、コロンボ着。ここまで来ると椰子はもう珍らしくはなくなった。