Classiques japonais avec furigana
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ししゃのしょ
死者の書
折口 信夫
Lisez 死者の書 (ししゃのしょ) de 折口 信夫 (おりくちしのぶ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 62 340 caractères · 126 écrans
六
何処からか吹きこんだ朝山颪に、御灯が消えたのである。当麻語部の姥も、薄闇に蹲って居るのであろう。姫は再、この老女の事を忘れていた。
ただ一刻ばかり前、這入りの戸を揺った物音があった。一度 二度 三度。更に数度。音は次第に激しくなって行った。枢がまるで、おしちぎられでもするかと思うほど、音に力のこもって来た時、ちょうど、鶏が鳴いた。其きりぴったり、戸にあたる者もなくなった。
新しい物語が、一切、語部の口にのぼらぬ世が来ていた。けれども、頑な当麻氏の語部の古姥の為に、我々は今一度、去年以来の物語りをしておいても、よいであろう。まことに其は、昨の日からはじまるのである。
六
門をはいると、俄かに松風が、吹きあてるように響いた。
一町も先に、固まって見える堂伽藍――そこまでずっと、砂地である。
白い地面に、広い葉の青いままでちらばって居るのは、朴の木だ。
まともに、寺を圧してつき立っているのは、二上山である。其真下に涅槃仏のような姿に横っているのが麻呂子山だ。其頂がやっと、講堂の屋の棟に、乗りかかっているようにしか見えない。こんな事を、女人の身で知って居る訣はなかった。