Classiques japonais avec furigana
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ししゃのしょ
死者の書
折口 信夫
Lisez 死者の書 (ししゃのしょ) de 折口 信夫 (おりくちしのぶ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 62 340 caractères · 126 écrans
玉藻が、深海のうねりのままに、揺れて居る。やがて、水底にさし入る月の光り――。ほっと息をついた。
まるで、潜きする海女が二十尋・三十尋の水底から浮び上って嘯く様に、深い息の音で、自身明らかに目が覚めた。
ああ夢だった。当麻まで来た夜道の記憶は、まざまざと残って居るが、こんな苦しさは覚えなかった。だがやっぱり、おとといの道の続きを辿って居るらしい気がする。
水の面からさし入る月の光り、そう思うた時は、ずんずん海面に浮き出て来た。そうして悉く、跡形もない夢だった。唯、姫の仰ぎ寝る頂板に、ああ、水にさし入った月。そこに以前のままに、幾つも暈の畳まった月輪の形が、揺めいて居る。
のうのう 阿弥陀ほとけ……。
再、口に出た。光りの暈は、今は愈々明りを増して、輪と輪との境の隈々しい処までも見え出した。黒ずんだり、薄暗く見えたりした隈が、次第に凝り初めて、明るい光明の中に、胸・肩・頭・髪、はっきりと形を現じた。白々と袒いだ美しい肌。浄く伏せたまみが、郎女の寝姿を見おろして居る。かの日の夕、山の端に見た俤びと――。乳のあたりと、膝元とにある手――その指、白玉の指。姫は、起き直った。