Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ひとうとうこうき

比島投降記

石川 欣一

Lisez 比島投降記 (ひとうとうこうき) de 石川 欣一 (いしかわきんいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 333 caractères · 134 écrans

Aozora Bunko

日本人は僕一人である。それで、乗組員と同じ食事をすることになった。士官と水兵の食事が終る頃、きまってARという水兵長が「イシ、チャウ」と知らせに来る。僕は遠慮して甲板でひとりで食事をした。この時のことは既に書いた通りである。

ある朝、ひどい時化で甲板にいられず、兵員の食堂で食事をした。オイルクロースを張った食卓の一番端に、皿を持って行って坐ると、丁度食事を終って立上ったGが、実にさりげなく、塩と胡椒の小瓶を右手の甲で押して食卓の上をすべらし、僕の前に置いて出て行った。

朝飯にはベーコン・エッグスが出た。塩と胡椒は僕からすこし離れた所にあり、そこには水兵が二、三人まだ食事をしていたから「取ってくれ」といえば取ってくれたに違いないが、PWである僕は遠慮していたのである。それと察してかどうか、Gは出がけに、黙って僕に親切をしてくれたのである。特に捕虜に情をかけるとか、武士の思いやりとかいうのではなく、なんということなく、習慣みたいに、こんなことをしたのである。これは何が原因しているのだろう。家庭の躾であるとしか、僕には思われない。それにしても、何といういい躾だろう。