Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ひとうとうこうき

比島投降記

石川 欣一

Lisez 比島投降記 (ひとうとうこうき) de 石川 欣一 (いしかわきんいち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 68 333 caractères · 134 écrans

Aozora Bunko

突然、僕の前に現れて“Sorry, Ishi !”といったのが、アパリから警備隊長として乗船して来た少尉である。N大学の経済科にいたということ以外何も僕は知らない。いつも黙ってパイプを吸い、本を読んでいた青年だが、何とPWの僕に向って「済まなかったな、イシ!」というではないか。僕は何と返事していいか分らなかった。そこへB中尉も、どこからか、血相を変えて飛んで来た。「何かトラブルが起ったそうだが……」といい「スキッパー〔艦長〕が晩飯に呼んだMPが……」と誰かがいうと、「いや、そのMPはまだ食堂にいる。別の人間が勝手に入って来たのだ。よし、俺が行ってつかまえてやる」と、帽子をかぶり直すなり、大股でランプを下りて行った。いつもニコニコ笑っている陽気なB中尉が、こんなにまで怒るかと不思議に思う位だった。それ迄あっけに取られていた使役兵達が「どうしたんですか」と聞いたが、僕は「いや、何でもないんです」と答えただけである。

その夜、たった一人、広い船艙の一隅に、たった一つ吊ったサックに横になって、僕は中々ねつかれなかった。“Sorry, Ishi !”という言葉が僕の耳を去らぬのである。