Classiques japonais avec furigana
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ゆしまもうで
湯島詣
泉 鏡花
Lisez 湯島詣 (ゆしまもうで) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 62 004 caractères · 122 écrans
この男が雨に当てまいと大切がるのは、単にこの羽織ばかりではなく、一品懐に入れているものがある。大きな紙入ではない。乳貰の嬰児でもない。すなわち一足表打の駒下駄であるが、尾上の使に駈出して来た訳ではない。これはさる筋の芸妓から年玉に買って頂いたので、すべて、お守扱いにしているから、途中で雨を啖ったために、汚すまいと懐中した。本人は生白い跣足である。
かかる人は、下町にまず松の鮓の忰源次郎を措いて外にはない。
それ世に、鳶の者の半纏は侠にして旦那の紋着は高等である。しかるに源ちゃんは両天秤、女を張る時は半纏で、顱巻。宗匠を張る時は紋着で巻莨、色と点取発句が一斉に出来るのであるから、ついこう下駄を懐に入れるような事にもなる。
かえって説く源ちゃんは町中の暗がりに羽織を着込んだが、足が汚れていたから下駄は穿かないで、そのまま懐を揺り固めた。
「可い塩梅だ、畜生。」と、これも何か両面に意味の通ずるような独言をして、また足早に歩き出した。
その面形のごとく凹んだ面の、眉毛の薄い、低い鼻に世の中を何と睨んだ、ちょっと度のかかった目金を懸けている名代の顔が、辻を曲って、三軒目の焼芋屋の灯に照された時、背後から、錆びたずんぐりした声で、