Classiques japonais avec furigana
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ゆしまもうで
湯島詣
泉 鏡花
Lisez 湯島詣 (ゆしまもうで) de 泉 鏡花 (いずみきょうか) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 62 004 caractères · 122 écrans
描ける幻
二十三
描ける幻
二十三
さて件の花簪屋と煎餅屋との間の露地口の木戸は、おしめ、古下駄等、汚物洗うべからずの総井戸と一般、差配様お取極で、紙屑拾不可入、午後十時堅く〆切。
梓が引越してから五日目の夜、十時を過ぎて帰ることがあった。木戸へ来ると、鍵がかかっていた。向うの湯屋では板の間を磨る音、男坂下なる心城院の門も閉って、柳の影も暗く、あたりは寝て、切通の方には矢声高く、腕車の疾く軋るのが聞えたが、重宝なもので、煎餅屋の店から裏長屋へ抜けられるのだから、木戸を閉切ったあとはこれが例、女房が見つけて、ちゃんと心得、
(書生さんの旦那、お穿物をお提げなすって、こちらから。)と言ってくれた。
極も悪し、面を背けて店口から奥へ抜けようとすると、同く駒下駄を手に提げて裏口からはらりと入って来た、前日の美人とぱったり逢った。袖も摺合うばかり敷居で行違う。振の明から溢れる緋の長襦袢が梓の手にちらちらと搦むばかり、颯とする留南木の薫。顔を見合せて、
(失礼、)
(……………)
(ちとお遊にいらっしゃいな。)と言い棄てて、それでもまだ答をしない中に、早やばたばたと戸外へ出たが、
(おばさん、お邪魔様、)と言いさまに口入宿の表の戸がらがら、鈴を鳴らして入った。