Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(一)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(一) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 246 214 caractères · 495 écrans
兼好法師の“徒然草”には、この資朝の人と為りを、こんな風に、時人の聞き書きとして随筆している。
――ある時。
西大寺の静然上人が参内した。腰はかがまり、眉は雪かと白く、まことに高徳の僧らしくみえた。折ふし、西園寺ノ内大臣実衡が見かけ、「あら、尊や。老いの清しさ」と三礼した。
するとまた、ある日。若い文章博士の日野資朝(以前、彼は文章博士だった)が、西園寺内大臣の眼の下へ、一匹の老いさらばえた汚い痩せ犬を曳いて来て、こう皮肉った。「どうです。これも、あら尊や、と申せませんか。何と、毛の禿げチョロけた鼻面なども、老いの清しさと、御賞美にあずかりたそうな顔しているではありませんか」
――彼の挿話は、も一つある。
京極ノ為兼が、武家の迫害にあい、六波羅武士の手に捕われて曳かれた日、人ごみの中で見ていた資朝は「……何も一生、世にあらん思い出には、いっそ、かくもあらま欲し」と、傍若無人な言を吐いて立ち去ったという。
彼の倒幕の誓いは、このとき腹にかたまったものだといわれるが、いずれにしても、寡黙のうちに嘲風をふくみ、骨の髄からの闘志と反骨の人だったことは、疑いない。