Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(七) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 330 262 caractères · 662 écrans
飛び火か。兵の放火か。バチバチとしばらくは火ハゼの音であったが、やがて天に冲す炎の柱になり出した。――その中天には、寒烈一月十日の、月があった。
ここわづか天下一統して
朝恩にほこりし月卿雲客
さしたる事もなきに
武具もたしなみ
弓馬を好みて
朝儀、道に違ひ
礼法、則に背きしなど
いつかは
かかる不思議の
出来るべき前表なりけん
とは、古典にみえる浩嘆であるが――この炎をうしろに、叡山東坂本へと落ち行った鳳輦の供奉の人々にしても、それぞれの感や反省の傷みに、足も心もそぞろであったに違いあるまい。
が、かくと知って、途中からは、追い追いと、お供の人影なども増していた。
阿蘇ノ大宮司惟時、出雲の宇佐兵衛ノ尉助景の手の者が、まっさきに来て、ご警固に付き、新田の諸侍、千葉、宇都宮、そのほか戦線から脱落していた軍兵なども、北白川から志賀越えへかけては、ぞくぞく、おあとを慕って来る。
すると、このうちにあった結城太田ノ大夫判官親光は、なに思ったか、
「いや君のお供をして叡山へ行くよりは」
と、急に独り言して、鳳輦のおそばへ走ってゆき、あたりの公卿へこう告げた。
「少々、思い立ったことがござりますゆえ、それがし一人は、ここにておいとま申しあげます。