Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(七) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 330 262 caractères · 662 écrans
「いや」
と、尊氏は好まぬ色をみせた。
「いずれといえ、みな生死をともにと誓って、ここまで落ちてきた者どもだ。その者たちの心を疑うようなことはせぬものぞ。――それに少弐の太郎頼尚は、かならず戻ると言って上陸って行った。彼の容子にどこか憂いが見えぬでもないが、二心ない丈夫と尊氏は見込んでおる。まずもすこし待ってみるがいい」
といっても、彼自身、待ちしびれたにはちがいなく、身じろぎして、坐り直した。
かたわらの将はみな流亡の垢とつづれを纏っていたが、尊氏だけは、紅地金襴の鮮らかなよろい小袖と具足を着ていた。――これは頼尚から彼へ。「父の妙恵入道が、筑紫入りの御晴着にと、とくに新調させたもの。なにとぞお召し給わりたく」と、先に献上していたものだった。――尊氏はよろこんで、それを着用すると共に、少弐父子の誠実さをも、同時に、心へ着込んだ風だった。
すると、やがてのこと。
その筑後ノ太郎頼尚が、
「お座船の衆」
と、岸の上に姿を見せ、
「諸所、物見をとげましたが、陸上何ら異状はございませぬ。ひとまず宰相の御座所は、芦屋の一寺に用意いたしおきました。お船をつけ、いずれもこの辺より御上陸なされませ」