Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(七)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(七) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 330 262 caractères · 662 écrans
であった。
「……敵ながら」
師久が、つい、呟くと、
「みごとだ!」
と、他の諸将も、叫ばずにいられないような実感をこめて、大きくうめいた。
「すべてで、何人?」
「袖名をしらべて、書き上げよう。袖名の無い者は持物をみれば分る」
「が、まず正成は」
「そうだ、正成は」
「や、や。正成らしき者はこのなかに見えませぬぞ」
「何の、そんなはずがあろうか」
「でも、ここには弟正季が見事割腹いたしておるに、そばの一座はあいておる。血しおのあとだけで屍はない」
諸将は騒ぎだした。ゆゆしいことである。責任上の狼狽だった。けれど理由はすぐわかった。消火中に兵の二、三が目撃したというのである。それはまだ堂内が黒煙濛々のうちだったという。どこからか飛びこんで来た尾張殿(高ノ師業)が、たしかに、一個のなきがらを横ざまに引っかかえて、火の中を裏口からそとへ駈け出して行かれた。おそらくそれではないでしょうか、というのであった。
師久は、聞くと、
「すばやい、尾張殿」
と、舌を巻いたふうであったが、急にあとを諸将の処置にまかせて、馬にとびのり、部落の西へさして駈けて行った。
彼は師泰の子であり、師直の子の師業と共に下御所(直義)の手についていた。