Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

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しほんたいへいき

私本太平記(五)

吉川 英治

Lisez 私本太平記(五) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 252 330 caractères · 505 écrans

Aozora Bunko

その旅人は、和氏の前でこう話した。

「……てまえは、酒匂の宿でその騒ぎを知りました。あくる日、箱根路へかかって、ひがしを眺めますと、なるほど、鎌倉の方は、いちめん墨のようで、江ノ島の影も、相模の海も、見えたものではございませぬ。……箱根権現の僧や神人らも、高い所へ出て、さて北条殿が亡んだら、次の世はどういうことになるのかと、みな言い合うておりました」

和氏は、それでほっとした。

加勢に駈けつけるわけではない。――千寿王のきみが、ご無事であればいいのである。

「これでまず、幼君のご無事なことは確かだが、もう一ト方の御台所(登子)のご安否は、いかがなものか?」

こうして、駿河の浮島ヶ原(沼津附近)まで来た日だった。――彼方から十騎ほどな旅装の武士が道をいそいで来る。――細川の隊とスレちがいかけた。すると、中の二人が、こなたの兵の笠印を見て、

「足利殿のお身内か」

と、訊いていた。

「されば」

和氏の弟、頼春が列を出て。

「これは仰せをうけて鎌倉へくだる細川一族の者でおざる。して、あなたがたは」

「や」

と、二人は馬を降りた。

「われらは、新田殿の家臣にて、鎌倉大捷の吉報を、みかどへお聞えに上ぐべく、上奏の御書を帯して西へ急ぐ、長井六郎、大和田小四郎と申す者にござりまする」