Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(五) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 252 330 caractères · 505 écrans
また朝暮、禁門をまもる近衛府とともに、みかどの、もっとも信頼に足る武将でもなければならない。そのひとは誰か。人々は注目したろう。ほかならぬ、新田右衛門佐義貞だった。
そのうえ、それら“翼賛の武者”は、義貞以下すべて、新田党の武将ばかりでかためられ、足利党はひとりもあげられていなかった。――畢竟、これはみな大塔ノ宮の背後力によるものと人は察した。高氏もそう解した。直義、師直らは、うすら笑って、歯牙にもかけぬ風だった。
秋は、駆け出してきた。ここへ来て、めッきり風は冷涼だった。
八月の五日。
高氏はめずらしく、左兵衛ノ督の衣冠で、参内した。
さきに、昇殿をゆるされ、位記では、途上の牛車もはばかりない身分である。ふっくらと、ふくら雀のように袖をひらいて、彼は牛車の中であぐらしていた。
時に、二十九だった。
あらためて、彼も感慨をおぼえていたろう。――十八、初めて家来の右馬介をつれて、都見物に出てきた頃の姿を振りかえると「自分もすこしは当時より大人になったか?」と思いもする。が、必ずしも「大人になった」とは、自分ではまだ信じえなかった。牛車、衣冠、こんなものは仮の装いと分っている。