Classiques japonais avec furigana
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しほんたいへいき
私本太平記(五)
吉川 英治
Lisez 私本太平記(五) (しほんたいへいき) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 252 330 caractères · 505 écrans
着京の日から九日め。
名越尾張守は、その本軍七千余騎のうえに、“三本傘”の旗のぼりをみせて、
「さきをとるぞ」
とばかり、はや前線へ出ていった。いわゆる“大手の軍”とは、敵の主力へあたることである。若い総大将の彼みずからが、のぞんで行った戦場だった。
本軍を見送って、やや小半日の後。高氏もまた、
「したくがよくば」
と、馬を陣前にやって、貝を吹かせた。
彼が前線へひきつれた兵力は、当初の五千だけだった。あとの数千は、後備として、いや意識的に、洛内へのこして行ったものだろう。
とまれ、からめ手軍の足利勢は、大手の軍勢とはやや方角を異にして、北野から洛外ざかいの山添いを、丹波口のほうへゆるぎ出していた。
が、その日は合戦なし。
そしてあくる日、桂川の一端へ、兵馬をならべ立てたが、なお高氏はうごかなかった。
――すでに下流の久我畷やら淀方面では、終日、敵へ挑む本軍の雄たけびがしていたが、彼は、やがて赤々と沈む陽をただ見ていた。
夜半。全戦場。
一ときしいんとなった。
そのさいの高氏を、古典「太平記」では、
からめ手の大将 足利殿は桂川の西の端に下り居て 酒もりしてぞ おはしける