Classiques japonais avec furigana
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すさのおのみこと
素戔嗚尊
Lisez 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 42 917 caractères · 86 écrans
が、彼はそう云う危険に全然無頓着でいるらしかった。あるいは無頓着に見えるくらい、刻々近づいて来る勝敗に心を奪われているのかも知れなかった。
彼は今も相手の投げた巌石を危く躱しながら、とうとうしまいには勇を鼓して、これも水際に横わっている牛ほどの岩を引起しにかかった。岩は斜に流れを裂いて、淙々とたぎる春の水に千年の苔を洗わせていた。この大岩を擡げる事は、高天原第一の強力と云われた手力雄命でさえ、たやすく出来ようとは思われなかった。が、彼はそれを両手に抱くと、片膝砂へついたまま、渾身の力を揮い起して、ともかくも岩の根を埋めた砂の中からは抱え上げた。
この人間以上の膂力は、周囲に佇んだ若者たちから、ほとんど声援を与うべき余裕さえ奪った観があった。彼等は皆息を呑んで千曳の大岩を抱えながら、砂に片膝ついた彼の姿を眼も離さずに眺めていた。彼はしばらくの間動かなかった。しかし彼が懸命の力を尽している事だけは、その手足から滴り落ちる汗の絶えないのにも明かであった。それがやや久しく続いた後、声をひそめていた若者たちは、誰からともなくまたどよみを挙げた。ただそのどよみは前のような、勢いの好い声援の叫びではなく、思わず彼等の口を洩れた驚歎の呻きにほかならなかった。