Classiques japonais avec furigana
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すさのおのみこと
素戔嗚尊
Lisez 素戔嗚尊 (すさのおのみこと) de Akutagawa Ryūnosuke (芥川 竜之介) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 42 917 caractères · 86 écrans
五
何故と云えばこの時彼は、大岩の下に肩を入れて、今までついていた片膝を少しずつ擡げ出したからであった。岩は彼が身を起すと共に、一寸ずつ、一分ずつ、じりじり砂を離れて行った。そうして再び彼等の間から一種のどよみが起った時には、彼はすでに突兀たる巌石を肩に支えながら、みずらの髪を額に乱して、あたかも大地を裂いて出た土雷の神のごとく、河原に横わる乱石の中に雄々しくも立ち上っていた。
五
千曳の大岩を担いだ彼は、二足三足蹌踉と流れの汀から歩みを運ぶと、必死と食いしばった歯の間から、ほとんど呻吟する様な声で、「好いか渡すぞ。」と相手を呼んだ。
猪首の若者は逡巡した。少くとも一瞬間は、凄壮そのもののような彼の姿に一種の威圧を感じたらしかった。が、これもすぐにまた絶望的な勇気を振い起して、
「よし。」と噛みつくように答えたと思うと、奮然と大手を拡げながら、やにわにあの大岩を抱き取ろうとした。
岩はほどなく彼の肩から、猪首の若者の肩へ移り出した。それはあたかも雲の堰が押し移るがごとく緩漫であった。と同時にまた雲の峰が堰き止め難いごとく刻薄であった。猪首の若者はまっ赤になって、狼のように牙を噛みながら、次第にのしかかって来る千曳の岩を逞しい肩に支えようとした。