Classiques japonais avec furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lisez 聞書抄 (ききがきしょう) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 108 821 caractères · 210 écrans
を謝したけれども、父は解せぬ顔つきをして、「一体これは、誰の贈り物でござるか」と尋ねた。傍にいた者が「それこそは江戸の上様よりの下され物でござる」と云うと、「江戸の上様とは誰のことでござる」と、又押し返して尋ねるので、「徳川殿じゃ」と云って聞かせると、「何しに徳川殿を上様と云うべきや、上様と申すは秀頼様より外にはなきものを」と、父はそう云って不敵なあざ笑いを浮かべたと云う。
挿絵
父と云うものを、太閤さまのお眼がねにかなって微賤の身から出世をした非凡な人間、偉い男としてより外に考えられない娘には、刀折れ矢盡きた今日に及んでも徳川殿の威勢に屈せず、事毎に楯をついているのが、いかにも平生の父らしく感ぜられて、きっとその時の通りであったろうと推量するにつけても、そう云う父が剛腹な顔つきをして車に乗せられ、首に鉄を箝められて、大坂や堺の町々を引き廻された様を考えると、いたましいとか情ないとか思うより先に、すさまじい気持が胸一杯になるのであった。ありていに云うと、負けても意地を張っている父の方が、摂津守殿や安国寺殿よりずっと偉いのかも知れず、それが英雄の態度と云うものかも知れないけれども、諸人の眼に曝されて沿道に溢れる悪口雑言を浴びながら、蒼白な顔に太々しい笑みをたゝえつゝ傲然と曳かれて行ったであろう父の餘りな鼻柱の