Classiques japonais avec furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lisez 聞書抄 (ききがきしょう) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 108 821 caractères · 210 écrans
蓋し行者順慶が彼の草庵を訪れる娘の髪を撫でながらとき/″\物を考え込んだり、涙をおとしたりしたと云うのは、ちょうど年頃が似かよっていたおみや御前の面影を追想したゝめであったことが、後になってから思い合わされるのであるが、それにしても此のおみや御前の父、一の台の局の前の夫は何者であったか。石田軍記には「父は尾張の何某」とあり、織田信長の旗下の士であったとか云うが、察するところ、右大臣などゝ云っても当時の公卿は大した財力も権力もあったわけではないから、身分の低い田舎武士などに娘を遣わしたのかも知れない。そうしてそれがたま/\後家になっていたか、或は無理じいに夫婦の仲を割かれたかして、秀次に迎えられたのかも知れない。萬一そう云うことであるなら、雲上の出であるからと云ってさまで別人あつかいをするには当らないが、しかし嵯峨の尼は、順慶が此の一の台の局のことを云い出す時にはいつも面上に一種の感激が溢れていたのを見たと云う。事実順慶は、三十人にあまる秀次の嬪妾のうちで彼女を一段と高く崇めており、いかなる場合にも敬慕の念を失うことがないのである。
挿絵
「愚僧などが拝みましたところでは、御器量と申し、品威と申し、ひときわすぐれていらっしゃいましたので、此のお方こそ誰方様にも優して御寵愛がありそうなものだと存じましたのに、そう