Classiques japonais avec furigana
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ききがきしょう
聞書抄
谷崎 潤一郎
Lisez 聞書抄 (ききがきしょう) de 谷崎 潤一郎 (たにざきじゅんいちろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 108 821 caractères · 210 écrans
餘人は知りませぬけれども、愚僧は後になりましてから、いろ/\のことで思い当るふしがあるのでござります」
挿絵
娘と乳母とは、こう語って行く順慶の口調が再び感傷的になって、しば/\太い溜息を洩らすのを聞くのである。
「それにしてもお身たちは、つい此の間、江州伊香郡古橋村の在所に於いて治部少輔殿を召し捕られ、徳川殿の御感にあずかった御仁こそ、別人ならぬその田中兵部大輔殿でござることを、よもお忘れはなさりますまい。お身たちに取っては憎い/\兵部殿、恩を仇で返した奴とお蔑みなされましょうが、しかし泉下におわします御父君は何と思し召してござろうやら。昔は自分が道具にお使いなされた男、それが今度は敵方の手先を勤めて、自分を搦め取ったと云うのは、因果が報いて来たのではないか、そうしてみれば自分で蒔いた種を自分で刈ったゞけのこと、今更誰を恨もうと、悟りすましていらっしゃるかも知れませぬ」
さて順慶は、此のあたりから次第に自分自身の問題、己れの心の変遷を話し始めるのである。
挿絵
「ところで、その時分、治部殿よりは愚僧の宿へも毎々お使者がござりまして、その後一向便りがないのはどうしたと云うのだ、近頃緩怠ではないかと、数度に亙ってお叱言を戴きましたが、それでも愚僧は、さしたる證拠もござりませぬのに、何として告げ口を致しましょうや。