Classiques japonais avec furigana
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えいほんどじょうりくせんのぜんや
英本土上陸戦の前夜
海野 十三
Lisez 英本土上陸戦の前夜 (えいほんどじょうりくせんのぜんや) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 35 727 caractères · 72 écrans
いつ、爆弾が、上から降ってくるかしれなかった。アンは、それでも、平気なものであった。彼女の目は、いつも前方を見つめていた。
一度は、丁度さしかかった町辻の郵便局へ、爆弾が落ちた。
「あ――」
と、アンは叫んだが、そのまま速力をゆるめないで驀進した。その辻のところでは、半壊の建物から、また、ばらばらと石塊がふってきた。アンは、ハンドルの上に首を縮めながらも、急カーブを切って崩れて落ちた石塊の充満する辻を、右へ折れた。車は、ゴム毬のように、はずんだ。
「アン、どこへいくのか」
と、仏は、ほれぼれと、ハンドルをとるアンを眺めた。
「どこって、あなた、リベッツの宿に荷物が置いてあるじゃありませんか」
「荷物が……」
「ああ、失礼。あたし、あなたにお話ししてなかったけれど、宿をかえたのよ。だって、いつお出になるかわからなかったんですものねえ」
「え、出るって……」
仏は、ふしぎそうな顔をした。
彼は、アンに初めて逢ったときには、アンを、まことの自分の妻だと思った。ところが私服の警官が現われて、アンが、リバプールの桟橋から飛び込んで死んだ男の妻君であって、何かの事情のため、自分に助けを求めたものじゃないかと思った。