Classiques japonais avec furigana
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えいほんどじょうりくせんのぜんや
英本土上陸戦の前夜
海野 十三
Lisez 英本土上陸戦の前夜 (えいほんどじょうりくせんのぜんや) de 海野 十三 (うんのじゅうざ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 35 727 caractères · 72 écrans
もう駄目かと思ったときに、空襲警報が鳴った。これが、天の助けだ。そうでなければ、ボジャック氏は、今ごろは縄目の恥をうけていたわけだ」
「よかったのねえ」
「だが、どうにも腑に落ちないのは、あのものものしい騒ぎの一件だよ。われわれフランスからの避難民を、イギリスの奴等は、いやに犯罪人あつかいするじゃないか。フランスは、あんなにイギリスのために、ドイツの奴等を喰い止め、血を流してまでも働いてやったのに」
「仕方がないよ。いまに、誤解がとけるだろうよ」
「しかし当分は、小さくなって隠れていなくてはね」
仏天青は、廊下に立ってこの会話を盗み聴きしていたが、それ以上、聞くにたえなかった。ボジャック氏とかいう男は、リバプールの港へ飛び込んだ人物であり、そしてアンの連れであった。すると、アンの亭主ではないか。アンを自分の妻君だと信じていた仏天青は、全身、血が一時に逆流を始めたような気がした。
(このまま、列車から飛び下りてしまおうか?)
と、仏天青は、思った。
だが、彼は、遂に、そうはしなかった。そして、コンパートメントへ入っていったのであった。
彼は、初めて声の主ボジャック氏の姿に接した。