Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 157 440 caractères · 313 écrans
むかしは水茶屋の茶汲み女であったにしても、不思議な縁で平次と一緒になったお静は、何んという良い女房振りだったでしょう。内気で無口で、この上もなく清潔なくせに明るくて健気で、傍にいる者をホカホカと温めるようないいようもない優しさ。これこそ『江戸一番の女』と、八五郎はベアトリーチェのように思い込んで、心ひそかに自分の守り本尊のように信じていたのです。
そのお静が悪者に誘拐されて、条件も猶予もなく今夜限りの命と宣告されているのにジッと物を考えている平次の沈着ぶりが、八五郎には腹が立ってたまらないのです。
「親分、何んとかして下さい。火の中へでも水の中でもあっしは飛び込んで行きますよ」
狭い単衣からハミ出す膝ッ小僧をそろえて八五郎は平次にねじ込むのです。
「せくなよ八、おれも女房を見殺しにしたいわけじゃない。が、こんな時逆上すると、良い思案が浮んで来ない」
「――」
「今直ぐ、ここで相手の巣を突き止め、向うが新らしい術を打つ前に直ぐに飛んで行って、お静を救い出す外はない――お前はまず何処へ見当をつけたものだと思う」
平次はさすがに突き詰めておりました。淋しい行燈の上、溜った丁子をかき立てることも、いつもの癖の粉煙草をせせることさえ忘れて、八五郎と膝を突き合せるのです。