Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控 鬼の面
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控 鬼の面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 130 082 caractères · 257 écrans
でも一度女道楽の味を覚えた金之助は、三十年増のお組やお園の、濃艶極まる魅力が忘れられず、時々は発作的な情熱に駆られて、二人のうちの、何方かに通う癖は止まなかったのです。
「若旦那は居るかえ」
平次が店からヌッと入ると、出逢い頭の可愛らしい娘が、ヒラリと奥へ姿を隠してしまいました。金之助の許嫁、お夏というのでしょう。
素よりチラリと見ただけですが、これは実に、馥郁たる乙女でした。碧い単衣に赤い帯も印象的ですが、それよりもほの白く清らかな頬や、霞む眉や、少し脅えては居たが、聡明らしい眼が、突嗟の間ながら、平次に素晴らしい印象を与えてくれたのです。
「おや、銭形の親分。まァ、どうぞ」
などと、お夏と入れ替りに出て来た、若旦那金之助は如才がありません。
「あっしの用向はお察しだろうが、ね、若旦那」
隣町附き合いで、十手捕縄の手前はあるにしても、平次にも少しは遠慮があります。
「ヘェ」
「お前さんは、あの大雨の中で、ズブ濡れになって、お園の家へ行き、間もなく雨の中へ飛出したということだが――」
「其処ですよ、銭形の親分――乾いたものと着換えて、さて落着いて考えて見ると、黙って居た私が悪かったと思います。