Classiques japonais avec furigana
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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(七)平次女難
野村 胡堂
Lisez 銭形平次捕物控(七)平次女難 (ぜにがたへいじとりものひかえ) de 野村 胡堂 (のむらこどう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 152 696 caractères · 310 écrans
まだ轡を放さなかった馬丁の黒助は、張り切った馬の首の下から必死の声を絞ります。
ヒョイと見ると、なるほど奔馬はもうお濠の崖へ乗出そうとしているではありませんか。
「あッ」
半之丞は本当に必死の思いで飛降りました。イヤ、転げ落ちたと言った方がよかったでしょう。大地に抛り出されて、起き上がらぬうちに、狂いに狂った馬は、二三十尺もあろうと思う崖の下へ、一塊の土のごとく落ちて、水音高く沈んでしまったのです。
「旦那様、お怪我は?」
「おお黒助、文箱を探してくれ」
「ここにございます、旦那様」
「有難い、それさえあれば」
落散る文箱を取って差出すと、半之丞押し戴いて立上がりました。埃と泥とに、見る影もなく塗れておりますが、馬は下手でも、体術の心得が確かなので、幸い大した怪我もなかった様子です。
しかしこの醜態をいつまでも往来の人に見せるわけには行きません。半之丞は濠に落ちた馬の始末を黒助に任せて、自分は御墨付の入った文箱を後生大事に、そこからはもう眼と鼻の間の屋敷へ帰って来ました。
屋敷といったところで、主君大場石見のお長屋、落馬をした埃だらけの体で、主君石見の前へ出ることもできません。