Classiques japonais avec furigana
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しんさいこうき
震災後記
喜田 貞吉
Lisez 震災後記 (しんさいこうき) de 喜田 貞吉 (きたさだきち) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 20 544 caractères · 41 écrans
★真の天国はたった七日間だった
それも無理はない。震災後は世の中の秩序が紊れてしまって、汽車の窓の外からブラ下ったり、屋根の上に乗ったりしてもそれをどうすることも出来なかったのだ。むろん二等、三等の区別などはない、たまに青切符の権利をでも主張しそうな態度を見せようものなら、それこそ大変だった。「何だ! 二等客だと思って威張るない。こんなさいに二等も三等もあるものか。俺等は焼き出されだ。二等の賃金を払う余裕があるなら罹災者に義捐しろ」と怒鳴りつけられたものだ。その気分は容易に除かれぬ。
東京へ帰って第一に目についたのは、電車や交番などに貼り出された宣伝ビラだ。「大小便は便所へ、塵芥は塵箱へ、汚水は溝へ」ということが麗々しく書かれているではないか。帝都は焼野の原となり、都人はそれを荒野の原ぐらいの気分になっているのだ。帝都の復興はまずこのすさんだ気分から始めねばならぬのであろう。
★真の天国はたった七日間だった
これも十月七日帰京のさいの乗り合いの罹災者の話。
焼き出されてから取りあえず救護所へ収容せられて、同じ境遇の数家族同居、財産としては身につけている衣類ばかりで、まだ将来の方針も立たず、縁者の行衛を尋ねてみるほかは何をなすということもなく、毎日一同ゴロゴロしていて、同一の配給食糧に生活しつつ空しく一週間ばかりを過ごした時のことであった