Lecture japonaise

Classiques japonais avec furigana

ja-reading.com

Lisez des classiques japonais en ligne avec furigana. Filtrez par niveau JLPT, touchez un mot pour le sens et traduisez une phrase.

ひこうきにのるあやしいしんし

飛行機に乗る怪しい紳士

田中 貢太郎

Lisez 飛行機に乗る怪しい紳士 (ひこうきにのるあやしいしんし) de 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.

N2 · avancé · kanji et kana modernes · 1 409 caractères · 3 écrans

Aozora Bunko

A操縦士とT機関士はその日も旅客機を操って朝鮮海峡の空を飛んでいた。その日は切れぎれの雲が低く飛んで、二〇メートルと云う烈しい北東の風が、水上機の両翼をもぎとるように吹いていた。下には荒れ狂う白浪が野獣が牙をむいたようになっていた。

機体は木の葉のように揺れた。それは慣れているコースではあるが、二人にとってこれほど苦しい飛行はかつてなかった。A操縦士はハンドルに、T機関士はエンジンにそれぞれ全神経を集めていた。

突風に乗ったと見えて機体がぐらぐらとなった。T機関士ははっとして眼をあげた。機体は真黒い雲の中に入っていた。

(あぶない)

同時に体が浮くようになった。機体は猛烈な勢で落ちていた。

「あ」

T機関士は思わず叫んだ。しかし、それも瞬間、飛行機はそのまままたぐんぐんとあがって往った。

(よかった)

T機関士はほっとした。そして、額の脂汗を拭きながら、見るともなしに後の客席に眼をやった。左側の二番の客席に、痩せぎすな一人の紳士が腰をかけていた。発動機の整備と云う重大な任務をもっているT機関士は、出発の時には何人よりもさきに機上の人となるので、したがって何んな客が幾人乗るか、そんな事にはすこしも注意しなかった。