Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
で、今度はこの一廓の、ほかの墨屋敷を訪れて尋ね廻った。ところが、誰の答えも一致して、
「アア、お千絵様でございますか。お気の毒でございますねえ。ですけれど、手前方では、あのお方のことについて、何の存じ寄りもございません」と、ことに話を避けるのみか、姿を見たこともないという家ばかりだ。
毎日、同じ姿で聞き歩くのも変なので、俄屑屋を思いついた。これならどこの横丁へでも自由に入れる。日に一度ずつ墨屋敷の近所を歩き廻ったところで怪しまれる気づかいはない。
そうしてようよう今日呼びこまれた家の内儀が、どうやら甲賀家や墨屋敷の事情に詳しい口ぶりなので、万吉は、わざと生地をはいでみせて、この手がかりを遁すまいとしたのである。
万吉が上手に口裏を探ってみると、そこの主は元甲賀組とも多少由縁のあった者らしく、初めは気をすくませていた内儀も、だんだん隙を緩めてしゃべりだした。
「では何でございますか、そのお千絵様の居所さえ、お分りになればよろしいので」
「ええ、それさえ知れれば、こんな寒空に鉄砲笊を担いで、毎日歩き廻ることもねえんです。で御新造様、一体お千絵様は、どこへ立ち退いてしまったものでしょうね?」