Classiques japonais avec furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lisez 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) de 吉川 英治 (よしかわえいじ) en japonais avec furigana. JLPT N2. Touchez un mot pour le sens.
N2 · avancé · kanji et kana modernes · 262 100 caractères · 523 écrans
今朝は厚ぼったく積っていた。
カラン、カタンと、小桶の音。
喜撰風呂のざくろ口には、もう湯気の中に洒落本のだじゃれをまる呑みにしているような、きざで通がりで、ケチで、色男ぶった糸びん頭の怠け者が、ふさ楊子をくわえて真っ赤にゆだりながら、
「アアいい気持だ、どうも、こたえられねえ」
「朝風呂はオツでげす」
「この雪を見ちゃ、また今日も帰られませんて」
「おぬしの買った女はなんという湯女だっけ」
「エヘヘヘヘヘ」
「いやに納まってるじゃねえか。浅黄はおよしよ」
「どうも、すみません。なんしろここに来ると、めっきり痩せてしまうんで、やりきれませんて」
などと、神田界隈では、この大雪に焼け出された人々が路頭に凍えているのも思わずに、いけしゃアしゃアと、気のいいことを吐かしている。
客を相手に夜をふかして、まだねむたげな湯女たちは、しどけない寝乱れ姿で板の間の雑巾がけ、暖簾口の水そうじ、雪をかいたあとへ盛塩を積んで、
「オオ寒い、まだ降ってるよ」
とあわてて重い戸を閉める。
朱塗の広蓋へ、ゆうべの皿小鉢や徳利をガチャガチャさせて、またそこへ、だらしのない女が二階から持って降りてくる。