Classici giapponesi con furigana
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いやなかんじ
いやな感じ
高見 順
Leggi いやな感じ (いやなかんじ) di 高見 順 (たかみじゅん) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 292.113 caratteri · 587 schermate
イソダマを岩から俺はむしり取って、海のなかに放り投げた。小さなその貝は、小さいくせに、小さいなりに、岩にしがみついていて、それはちょっと必死の感じだったが、人間の手にはかなわない。ころりと、しょせんは脆く取れるのを、手さぐりで取りながら、俺は海んなかに放りつづけた。そうして俺は海をみつめた。だんだん遠くの海へ眼をやった。
「お父うーちゃん」
志奈子の声にわれに返った。遠くからの声だが、わが子の声は波音に消されないで、俺の耳に敏感にひびく。
「お父うーちゃん」
と波子も手をあげて俺を呼んだ。子供を連れて東京から来たのだ。
「おーい」
と俺も手をあげた。イソダマみたいにチャイチイ(小さな)志奈子が一心に砂浜を駈けてくる。
その夜、俺は波子に言った。
「俺も上海へ行こうかな」
いきなりなので波子はきょとんとしていた。だが、俺としては、この上海行きの気持は、北海道から東京へ引き揚げる直前、百成綾子に会ったときに、すでに心に来ていたものだった。突然の思いつきではない。
「上海へ……?」
この波子はそれこそ艱難辛苦して、今では小さいながらも飲み屋を出していた。屋台に毛の生えたようなものだが、店は店だ。