Classici giapponesi con furigana
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おさん
おさん
山本 周五郎
Leggi おさん di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 33.128 caratteri · 66 schermate
二の三
二の三
宿を出たのはまだ暗いうちだった。
九月にはいったばかりだが、山が近いので気温も低いし、濃い霧が巻いていて、すぐまぢかにある筈の山も見えなかった。早川の流れも眼の前にありながら、白く砕ける波がおぼろげに見えるだけで、瀬音も霧にこもって遠近の差が感じられなかった。魚や野菜の荷を背負って登るあきんどたちと、すれちがいながら、三枚橋まで来て参太は立停った。おふさという女が、そこで待っていてくれ、と云ったのだ。
参太はなにも事情は訊かなかった。江戸までいっしょにゆくということ、江戸へはいったらすぐに別れること。それだけの約束であった。おふさという女にはしっかりとしたところがあるし、世間のことにも馴れているようだ。旅に必要な手続きなどはもちろん、こっちの負担になることをするような心配もないらしい。参太のほうでも、旅の道伴れという以上の気持は少しもなかった。
振分の荷と、仕事道具の包を肩に、橋の袂で立停ると、うしろで「おじちゃん」と呼びかける声がした。見ると、九つばかりになる子供がふところ手をして、半ば逃げ腰になったまま、きげんをとるように笑いかけた。