Classici giapponesi con furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Leggi 五瓣の椿 (ごべんのつばき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.721 caratteri · 296 schermate
「存じません」娘は掴まれた手を放そうともせず、おちついた声で、かぶりを振りながら云った、「八幡様やお不動様へはおまいりにいったことがありますけれど、料理茶屋などへあがったことはございません」
「料理茶屋だって」と千之助がするどく反問した、「料理茶屋だということがどうしてわかった」
「だってこの、――」と娘は吃った、「この人を見れば、茶屋奉公をしている人だということはわかると思います」
「しらばっくれるな」
千之助は掴んでいる娘の手をぐいと引いた。一と揺り揺すぶってみるつもりだったが、娘はまったく無抵抗で、その躯は引かれるまま、斜め前にやわらかくのめった。千之助は手を持ち変え、右手で娘の腕の付根を押えこんだ。
そのとき襖があき、男が一人、こっちを見て「あっ」と仰天したように叫んだ。
「なにをなさる」男はとびあがりそうな声でどなった、「おまえさんはなんだ、どうしたんだお倫さん、これはなんのことだ」
「騒がないで下さい清さん、人違いなんです」と娘が静かに云った、「――済みませんが、逃げもどうもしませんから、どうか乱暴なことはなさらないで下さい」
千之助は手を放して、男を見た。