Classici giapponesi con furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Leggi 五瓣の椿 (ごべんのつばき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.721 caratteri · 296 schermate
おしのは息が詰まりそうになった。まにあうようにという言葉は、父が自分の死の迫っていることを知ったからであろう。そんなことはないと否定したかったが、父の眼のはげしい光を見ると、おしのは舌が動かなくなり、使いを命ずるために立ちあがった。
亀戸へは徳次郎がいった。戻って来た彼はおしのを呼んで、そっと首を振った。ああ、とおしのは太息をつき、父の枕許へ帰って坐りながら、おっ母さんはぐあいが悪くて寝ているそうだ、と父に云った。死にかかっている者に嘘を云うことの、苦しさと申訳なさとが、おしのの声音によくあらわれていた。
「よし、よし」喜兵衛は眼をつむりながら云った、「それならそれでいい、いまとなっては同じことだ」
「あとであたしがいってみます」
「いや、いけない、おまえはここにいておくれ」喜兵衛は眼をあいておしのを見た、「いつどんなことが起こるかもしれないから、おまえは側をはなれないでおくれ」
「いいわ」とおしのは頷いた、「じゃあまた徳どんにいってもらいましょう」
「それも明日でいい」と喜兵衛が云った、「もうどっちでもいいよ」
使いをやるまでもない、母が帰れば友吉が伴れて来るだろう。