Classici giapponesi con furigana
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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
Leggi 五瓣の椿 (ごべんのつばき) di 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 149.721 caratteri · 296 schermate
その顔色はいま蒼黒くなり、唇がたるみ、眼は壁の一点をみつめたまま動かなくなった。お由は出ていった、と彼は思った。しかしそれは重大なことではない、お由の躯の持っている魅力は稀なものであるが、美味なほど飽きやすいもので、その特徴の稀なものであることが、却って彼には鼻について来ていた。これまでの女遍歴で彼が得たものは、石を踊らせようとして汗みずくになって徒労に終るか、反対にこっちが踊らされて疲労困憊するか、いずれにせよ、結局はこちらのへたばるのがおちであった。
「これであの娘にもいなやは云わせないぞ」と彼は呟いた、「夫婦にならなくてはいやだって、自分のほうから云いだしたんだからな、こんどこそ逃がさないぞ」
ああいう嬌いたしなや、いろけの溢れるような表情をもった女は、そのことになると却ってつつましく、求めかたも控えめで、静かなのが一般の例だといわれる。蝶太夫の経験でもそういう例が多かったし、そういう相手には興味がなかった。しかしいまは違う。おれもそろそろおちつく年だ、と彼は思う。一生おちつくというわけでもない、男としてはまだこれからであるが、このへんでいちどおちついた世帯を持ち、芸のほうに専念してみるのもいいだろう。